東日本大震災後、日本の研究・実験施設は、転換期を迎えることになります。
研究優先よりも、安全の優先。
そのために必要なことを、私たちも様々な角度からアプローチしてきました。
中でも、従来はテストルームだけで行われていた製品開発から脱却し、国内初の産学連携研究として、実際に使用している「リアルラボ」を使った研究・開発が、 近い将来、日本の研究環境のスタンダードになればと考えています。

安全な理想的化学研究環境 
整備に関わる研究 (ウエットラボ)

2011年3月に発生した東日本大震災をきっかけに「ラボの安全とは何か」ということに産学連携で初めて取り組んだ包括的な研究です。研究活動の現場では大小様々な災害が発生する可能性が内在しています。誤操作や不注意で発生する事故、台風や地震で発生する風害、水害、火災、転倒、崩壊、室内環境の不具合により発生する健康障害や事故、などです。大震災をきっかけに始まったこの研究では実験設備の地震対策からスタートしました。また2014年9月からは薬学研究科赤井研究室との連携も開始。ここでは頻繁に使用される小型から中型の各機器や装置、収納什器などの耐震対策についても試行を実施しています。どのようにしてコストを抑えながら効果的な対策を講じることができるのか。実用面でのツール開発を始めています。

研究開始 2011年6月~現在
共同研究先担当教員 大阪大学産業科学研究所 
教授 中谷 和彦先生
研究開始 2014年9月~現在
共同研究先担当教員 大阪大学大学院薬学研究科 
教授 赤井 周司先生

安全な理想的生物研究室 
環境整備に関わる研究

巨大地震の揺れによる実験室内の設備の転倒や移動、落下を防止するための耐震フレームシステムの考案と開発。より安全で快適で安心のできる室内環境を実現するための現実のラボにおける気流観測や給気位置、排気設備の位置関係の考察。機器の有効で実用性のある固定方法などの考案、実験、検証を行っています。2011年6月からスタートした化学系実験室に続いて2013年4月からは生物系実験室もスタート。ラボの安全設計に必要な多様なナレッジが蓄積されてきています。

研究開始 2013年4月~2017年3月
共同研究先担当教員 大阪大学産業科学研究所 
名誉教授 山口 明人先生

大阪大学産学連携研究指導及び、
実験室内発生災害対策全般

「安全で理想的科学研究室環境整備に関わる研究」に連動して、より現実的かつ具体的な研究・実験設備および環境に関する研究活動を実施しています。例えば、実験設備の燃焼試験・耐震試験を実施することにより、これまでは予想される事象として捉えられてきた災害による現象を実際に確認。研究設備の設計や製品開発に利用されるだけではなく、その成果は学生等研究従事者への安全教育にも活かされています。

研究開始 2011年6月~現在
共同研究先担当教員 大阪大学安全衛生管理部 
教授 山本 仁 先生

環境安全教育手法創成研究

2014年12月に東京大学本郷キャンパス内にある環境安全研究センターにアズワン株式会社と共同して研究のための実験設備を設置しました。この設備は大学の教育研究活動における具体的で実効的な環境安全の教育手法を創成することを目的にしています。フレームシステムをベースにガラス扉や壁面パネル、天井パネルなどを用いて研究の多様性に対応したモデル実験室を作製しました。このモデル実験室を使って、座学で得た環境安全に関する専門知識を活用・実践できる知識に昇華させるための体験学習教材としての活用や教育手法の構築および教育効果の検証が期待されています。たとえばこの空間を利用して危険ガスが室内に漏洩した際に起こる事象のデータ取得が可能です。

研究開始 2014年4月~現在
共同研究先担当教員 東京大学環境安全研究センター 
教授 辻 佳子先生